介護職は、思い通りに身体を動かせない人にとって重要な職業である。物をとる、食事を作る、などの単純作業であれば素人でも代行できるが、排泄処理や入浴などはそうはいかない。大人の体重を支える技術や体力も必要であり、注意すべき観点などは専門職でしかわからないことが多い。しかしそんな介護の仕事は、介護を必要とする者だけに恩恵があるわけではない。介護される者の家族もまた、その恩恵を享受することができるのである。
家族というだけで発生する介護義務は、ときにそれまで培った愛情ではまかないきれないぐらいの苦痛をもたらす。介護される側は自分の身体を思い通りに動かせないストレスを感じ、介護する側は報酬もない重労働にありったけの時間と体力をかけなければならないストレスを感じている。お互いがお互いに、もっと相手に優しく接したい、感謝を伝えたい、と思いながらも、それができないもどかしさが常につきまとうのだ。その願いを叶えるのもまた介護職の存在意義である。介護士が間に入ることにより、介護される者とその家族の絆を長くつなぎとめることができるのだ。家族は安心して介護を任せられ、これまで通りに家族との交流を持つことができる。これも、間にはいるのがただの他人ではなく介護士だからこそと言える。
人1人を持ち上げるのは重労働だ。介護の専門家とはいえ介護士の仕事は生半可な気持ちではできない。しかし介護士がいてくれるおかげで、今日もどこかの家族が笑顔で幸せな日々を過ごしている。人を笑顔にする仕事がしたい人は介護職を目指してもいいかもしれない。